実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『宮本武蔵 巌流島の決斗』(内田吐夢)[C1965-35]

力餅を食べながら、先日から観たかった『宮本武蔵 巌流島の決斗』を観る(DVD)。

宮本武蔵 巌流島の決斗 [DVD]

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以下、『宮本武蔵 巌流島の決斗』のどこが好きかについて。

  • 毎回、その回しか出ない魅力的な人物がいるが、今回は長岡佐渡片岡千恵蔵。すべての表情が意味ありげで、表情のわずかな変化も意味ありげ。アップがぜんぜん気にならない。すべての台詞も意味ありげ。わたしは別に千恵蔵のファンではないが、あのしゃべり方は好き。いちばん好きな台詞は、小次郎を見て言う「小賢しい奴」。
  • 佐々木小次郎高倉健が準主役である。とはいえ、魅力全開だった『宮本武蔵 二刀流開眼』[C1963-36]に比べ、本作での小次郎はあまり冴えない。不敵な笑いとか、小次郎の持ち味であるはずのおいしいところを、全部千恵蔵に取られてしまっている。
  • 決闘が簡潔でかっこいい。集団アクションが苦手なので、好きな決闘シーンは三十三間堂と巌流島。武蔵の登場のしかたとか、全体的には三十三間堂が好きだけど、決着のつきかたは断然巌流島。吉岡伝七郎平幹二朗ごときではかっこよく死なせてもらえないが、小次郎=高倉健になるとかっこよく死ねる。
  • 宮本武蔵中村錦之助の屁理屈やはったりも、第五部ともなれば最高潮。「小次郎、破れたり。」
  • なによりもラスト。ラストの武蔵の自己総括はどの作品も楽しいが、第四部まではそのあとが「つづく」なので、やはり中途半端な感じは否めなかった。今回は本当に終わるばかりか、回を追うにつれ屁理屈で自分を納得させる度合いが高まっていた武蔵は、宿敵に勝ちながら、とうとう自分を納得させることができずに終わる。その無常感とロングショットの海のシーンがマッチして、忘れがたい印象を残す。

J先生はおばば=浪花千栄子が改心するのがよほど好きらしいが、別に改心しなくてもよかったんじゃないだろうか。だいたい孫ができたからってあっさり心変わりするなんて、おばばの沽券にかかわると思うのだが。