バンガロールに来ちゃったの

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『五月の恋(五月之戀)』(徐小明)[C2004-V]

吉田輝雄版『愛染かつら』がなかったので、メロドラマは少しお休みし、徐小明(シュー・シャオミン)監督の『五月の恋』(映画生活)を観る(DVD)。公開時にはレイトショーのため観られなかったが、最近日本版DVDを入手したのでやっと観ることができた(台湾版DVDも持っているけれど…)。

五月の恋 [DVD]

五月の恋 [DVD]

台湾人の青年・阿磊(陳柏霖/チェン・ボーリン)と哈爾濱から来た少女・瑄瑄(劉亦菲/リウ・イーフェイ)との淡い恋物語に、兵士として台湾に来て大陸に帰れなくなった外省人とその家族の物語を絡めて描いたもの。京劇の公演で台湾に来た瑄瑄が、‘五月雪’(桐の花が雪のように散るさま)を求めて三義に行く。彼女はなぜ‘五月雪’を見たかったのか、なぜ三義に行きたかったのかを阿磊が探るという形で、台湾で亡くなった瑄瑄の祖父の物語が語られていく。祖父の元老兵を演じるのは田豐(ティエン・フォン)。

阿磊と瑄瑄が知り合うのは五月天のサイトを通じてであり、瑄瑄は五月天の大ファンで、阿磊はメンバーの弟であるという設定。まだ見ぬ孫の瑄瑄が五月天のファンだと聞き、おじいさんは五月天から五月雪を連想し、その言葉を瑄瑄に残す。五月天が実名で登場し、陳柏霖と劉亦菲が主演するアイドル映画でもあるが、実はこのおじいさんの物語が映画のメインだと思う。大陸と台湾の二つの家族、大陸訪問で初めて会った息子、故郷の変貌など、淡々と語られるのは、どうすることもできない数十年の空白の重みである。

大陸と台湾との合作映画なので、あまり生々しいことは描かれていないが、分断を余儀なくされた過去から、同じ五月天の歌を聞いて熱狂し、制限はあっても行き来することが可能になった現在までの時の流れが感慨深い。一方で、瑄瑄のようなこれからの時代の若者に託される希望があり、一方で、そのような時代になっても過去の空白は埋め合わせることができないというどうしようもなさがある。死ぬ前におじいさんが帰りたかった故郷は、決して帰ることのできない、今はもう存在しない1948年ごろの哈爾濱だったのだと思う。

勝興火車站など三義のロケ地は、登場シーンも少なく、そんなに「行ってみたい」と思わせるようには撮られていなかった。一方、哈爾濱は、聖索菲亞教堂(ソフィスカヤ寺院)が何度も出てきていた。瑄瑄の通う京劇の学校も何度も登場するが、ここは行ってみたいと思った。