実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『100%香港製造』(原智子)[B1294]

『100%香港製造』読了。

100%香港製造

100%香港製造

「100%香港製造」なモノ・コトを紹介するというコンセプトはとてもおもしろいし、唐楼、重慶大廈、茶餐廳、公屋、香港映画など、興味あるものも多数登場する。しかし、そのわりにツボにハマるところのない「うすい」本である。

よくわからなかったのは、「100%香港製造」なモノ・コトの中から、著者の思い入れのあるものを選んでいるのか、それとももっと客観的に選んでいるのかということ。思い入れで選んでいるのなら、もっと著者の好みや経験が前面に出ていたほうがいい。もっと「オレオレ」でいいと思う。

そうでないのなら、思い入れのある人の証言の紹介に、もう少し工夫がほしい。この本の中には著者の友人、知人が何人か登場し、同じ人物と思われる人が何箇所も出てくる。それなのに、毎度同じような説明がついていたりして、他の登場箇所と明確にリンクされない。これでは、「こういうことを言っている人がいる」というのと変わらない。特定の登場人物として紹介し、背景などをもう少し説明してあれば、血肉をもった個別の人物の発言として、その証言がもっと重みをもつと思う。

登場人物と同様に、文中に出てくる事柄に関しても、初出と既出がきちんと書き分けられていないところがすごく気になった。茶餐廳がさんざん出てきたあとで茶餐廳の定義が出てきても困る。