実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『沖縄やくざ戦争』(中島貞夫)[C1976-V]

力餅を食べながら、中島貞夫の『沖縄やくざ戦争』(映画生活/goo映画)を観る(録画)。しかし、お茶を飲みながら観る映画ではなかった。トラウマになりそうな映画である(自分にはないだけに余計恐いというか)。

『オキナワ、イメージの縁』[B1224]で読んで以来(id:xiaogang:20070628#p1参照)、ずっと観たいと思っていた映画。ほぼ一年経って、やっとスカパーでやってくれた。笠原和夫が脚本を書いたが映画化できなかった『沖縄進撃作戦』から、特にやばい部分を抜いて作ったのがこの映画ということだが、それでも沖縄では公開されなかったし、今も上映されていないということである。

とにかくテンションの高い、熱い映画。舞台は本土復帰後の沖縄。「本土のヤクザは絶対に入れない」というのが千葉真一。「大きな組織の下に入って、矢面に立たない程度のそこそこの地位を手に入れて、お金儲けができればいいじゃないか」というのが成田三樹夫。基本的には千葉ちゃんと同じ考えながら、本土のヤクザを入れないようにするのはもう無理だという現実も見据えて苦悩するのが松方弘樹。この三人が争う。

本土と沖縄との関係は、本土が沖縄を搾取し、沖縄が本土に同化するという方向にしかなりえない。そのことを、これまでの経験から千葉ちゃんも松方弘樹もよく知っている。成田三樹夫の考えは、現実的なようでいて、実はかなり楽観的でもある。どの道を選んでも結局は本土に負けるわけで、どこにも出口がない。ヤクザの話のように見せながら、現実の沖縄の問題とつながっている。30年以上経った今でさえ、単なるヤクザ映画の舞台装置としてみるにはあまりにも生々しく、その救いのない重さに圧倒される。

松方弘樹千葉真一室田日出男という『仁義なき戦い』シリーズを支える三人が、めちゃくちゃはまり役でいい味を出している。これに比べたら、全然おとなしくて端正な映画にみえる『仁義なき戦い』シリーズでは浮いていると思ったが、この映画の千葉ちゃんはよかった。千葉ちゃんをいいと思ったのは初めてだ(どこかのサイトに「『仁義なき戦い 広島死闘篇』に出るまでは正統派アクションスターだった」というようなことが書いてあったが、本当ですか?「ミスター・トイレ」(『カミカゼ野郎 真昼の決斗』[C1966-V])なのに?) 室田日出男はかなりの熱演というか怪演。どうみても沖縄人には見えない成田三樹夫は、いい役ではなくてがっかりだが、現実的な小人物を好演していたと思う。女優はロクなのが出ていないが、いつも思うけれど、70年代になると映画のエロ度(というより単なる露出度か)が一気に上がりますね。

ところで、室田日出男は「たっ殺(くる)せー」すなわち「たたき殺せ」って言ってたんですね。わたしはてっきり「タックルせー」って言ってるのかと思った。いや、別にラグビーの話だと思っていたわけではなくて、「タックルする」=「やっつける」みたいな隠語なのかと思っていた。

これはぜひ劇場で観たいので、どこかでやってください(たぶん中島貞夫特集とかでやってたのに、わたしがスルーしていただけなんですが)。