『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』読了。
- 作者: 栗本斉
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2008/05/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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雰囲気重視のブエノスアイレスのガイド本。せっかく地図が載っているのに掲載されている場所のごく一部しかプロットされていない、レストランの値段が書いてないなど、実用性は今ひとつである。もう一度アルゼンチンに行く機会があるかどうかわからないが、珍しいのでつい買ってしまう。
この本を見ていると、わたしの知っているブエノスアイレスとあまりに違いすぎる。わたしがブエノスアイレスを訪れたのは、1997年末から1998年初めにかけて。その後アルゼンチンは金融危機にみまわれ、「国がなくなるのでは」と囁かれたりして治安も悪化したが、持ち直して回復した。回復したあとのブエノスアイレスは、もしかしてわたしが知っているブエノスアイレスとは全く違う都市に生まれ変わったのだろうか。
ブエノスアイレスはカフェの街である。この本には多数のカフェが紹介されている。よろしい。各カフェの朝食メニューが、写真入りで紹介されている。たいへんよろしい(こういう本のつくりはめちゃくちゃ好き)。その朝食メニューとは、カフェ・コン・レチェとメディアルナである。カフェ・コン・レチェ、つまりカフェ・オ・レ。懐かしい。確かにアルゼンチンでは毎朝飲んだ。メディアルナ、つまりクロワッサン。えっ、クロワッサンですか? わたしがブエノスアイレスで食べたメディアルナは、見かけはクロワッサンに似ているが、味はかな〜り違っていた。でもこの本の写真のメディアルナは、クロワッサンの味がしそうに見える。メディアルナがクロワッサンの味になっていたら(そのほうがおいしいけれど)、なんだか寂しいですね。
この本を見るかぎり、ブエノスアイレスはグルメの街だ。なるほど事前に十分な調査をすれば、「食べ物がおいしかった」と言ってブエノスアイレス旅行を終えることも可能かもしれない。でもわたしの印象にあるブエノスアイレスは、おそろしく食べ物のまずい街である。一般に、先進国になるほど、厳選した店のレベルと無作為に選んだそのへんの店のレベルとの格差が大きいと思うが、アルゼンチンはそれほど先進国でもないわりに、この落差が激しい。いや、厳選した店には行っていないのでわからないが、とにかくそのへんの店がまずすぎる。アルゼンチンの食の思い出といえば、食べても食べても減らない激マズソフト麺スパゲッティ(ほんとにもう「給食ですか?」という味)や、チーズべたべたのラビオリや、死にそうにまずいサンドイッチ(そんなものがあるなんて想像できないでしょう?)をドギーバッグされてしまった恐怖である。そういうものとは無縁の、おいしそうな料理が並んだ紙面を見ると、これもまたなんだか寂しい。でもちょっと羨ましい。