実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『日本俠客伝 絶縁状』(マキノ雅弘)[C1968-37]

CAFE FREDY(公式)で昼ごはんを食べると、J先生は美容院だの食物映画だのに行ってしまう。わたしはフィルムセンターで、2本目の『日本俠客伝 絶縁状』(映画生活/goo映画)。

日本侠客伝 絶縁状 [DVD]

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『日本俠客伝』シリーズでは異色の現代もの。警察の取り締まりが厳しくなり、世間からはヤクザ=暴力団と受け止められるようになって、仁侠道を貫くことができなくなった時代が舞台。天盟会という組織の中で、刑務所にいて観念論を説く親分、現実の前に挫折せざるを得ない高倉健、あこぎな金儲けに走る渡辺文雄の対決を描いている。けっこうリアルな設定でなかなかおもしろいのだけれど、いまひとつ散漫な印象。ちょっと図式的すぎるのも気になる。健さんがシマを歩いていると、子分も連れていないのにみんなが怖がって散っていくところなどやりすぎだと思う。

キャストはふたたび地味になり、今回は天津敏も長門裕之も出ていない。健さんの子分が藤山寛美待田京介曽根晴美というのは、もしかして豪華かもしれないけれど。悪役は、渡辺文雄遠藤辰雄。親分が重要な役のはずだが、演じる伊井友三郎(って誰?)はどうもぱっとしない。健さんの義兄に扮する菅原謙二が好演している(でも地味)。

ヒロインは松尾嘉代で、健さん奥さん役。最初から奥さんがいるという設定は珍しい。女性像としては、いつもの仁侠映画のヒロインの枠を出ていないが、全体のストーリーと同様、リアルな雰囲気なのがおもしろい。現代の話なので、わりとふつうの夫婦という感じであり、藤純子とはずいぶん違う。二人で夜道を歩くシーンが捨てがたい。