実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『弥次喜夛道中記』(マキノ正博)[C1938-15]

京橋へ移動し、BLESS COFFEEで休憩してからフィルムセンターへ。『弥次喜夛道中記』を観る。『鴛鴦歌合戦』[C1939-05]が大好きなわたしとしては、時代劇ミュージカルと聞けば観ないわけにはいかない。

遠山の金さんと鼠小僧が弥次さん喜多さんに成りすまして旅をするというとても楽しい映画。しかしながら、『鴛鴦歌合戦』を基準にしてしまうと見劣りしてしまうのはやむを得ない。『鴛鴦歌合戦』ほど軽快ではなく、けっこう湿っぽい部分もあり、泣きの部分や教訓的な部分が十分こなれていなくてちょっと突出している印象。歌もコミカルではないので、歌自体はあまり記憶に残らない。

ニセモノの弥次さん喜多さんが、実は遠山の金さんと鼠小僧という設定がまずすごいけれど、実はわたしは『東海道中膝栗毛』の筋も知らなければ、遠山の金さんも知らない。そのへんをよく知っているともっとずっと楽しめるのかもしれない。「遠山の金さんってお侍だったんだ」とか「桜吹雪ってこれだったたのね」とか、超基本的なところでいちいち感心して観ていたわたしは、たぶんちょっとずれている。

出演者もある程度『鴛鴦歌合戦』と重複するが、『鴛鴦歌合戦』ほど豪華ではない。観ながら、「ディック・ミネはやっぱり喜多さんよりお殿様だよねえ」とか、「きれいどころが物足りないねえ」とか思ってしまう。そんななかでの大注目は悦ちゃん。前から好きだけれど、やっぱりいいよね、悦ちゃん。戦前の子役は、男は爆弾小僧、女は悦ちゃんで決まりだ。

それから、ファンじゃないけれどやっぱり千恵蔵はすごい。侍になっても町人になってもピタッときまるところが、荒唐無稽な物語を全然ウソくさくさせない。千恵蔵がミーチャを演じるオペレッタ版『カラマーゾフの兄弟』(もちろん監督はマキノ正博)も観たいですねえ。