実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『人のセックスを笑うな』(井口奈己)[C2007-20]

今日は歯医者に行ってから(今年から歯医者通いをする羽目になってしまったのが、なかなかおでかけできない原因のひとつである)出京(信じられないことに、羽田空港を除くと東京も今年初めてなのだ)。サイゴンでフォーをすすり、エクセルシオールでラテをすすってからシネセゾン渋谷へ。今年の初映画は『人のセックスを笑うな』(公式/映画生活/goo映画)。井口奈己監督は、『犬猫』がよかったので(id:xiaogang:20060721#p2)(映画館で観ていないのでどこかでやってください)、次回作に期待して、原作も、どんな内容なのかも知らずに観に来た。

ファーストショットのロケ地からして絶妙。坂道で車を拾おうとしている永作博美が、ロングショットの長回しでとらえられているのを観ただけで、この映画は絶対にいいぞと思ってワクワクした。すごくいい感じのロケ地が多く、ちょっと古っぽい日本家屋の家の中のたたずまいもいい。といっても、びしっと決まったきれいな場所とか、文化財みたいな家とか、特別おしゃれな家とかではなく、ふつうの地方都市の街角だったり、ちょっと古いふつうの民家だったり、とてもさりげない。若いスタッフ中心で撮っていると思われるなかで、美術が木村威夫なのがすごすぎる。

ロングショット気味の外景に、フィックスの長回し松山ケンイチ永作博美がキャンプ用のマットに空気を入れようとするところを長回しでえんえんと撮っていたりして楽しかった。このようなロケ地や、キャメラや、俳優たちのナチュラルな演技といったものによって形作られるふわふわした空気感は、『犬猫』もそうだったように、井口監督独特のものである。

内容的には、恋愛に悩む美大生三人組はリアルでナチュラルな、等身大の青春映画っぽいのに対して、人妻講師の永作博美は、家庭の不満といった不倫に走る理由があるわけでもなく、人を振り回して楽しむ悪女というわけでもなく、反省したり悟ったりするわけでもなく、とにかく明るく突き抜けているのがユニークでよかった。

主な舞台・ロケ地は群馬県桐生市。ぜひぜひロケ地探しに行きたい。今度、どこかの温泉の帰りにでも行こう。美大のシーンは女子美術大学(公式)のようだが、女子美は桐生にあるわけではないんだね。


上映終了後、井口監督とあがた森魚(永作博美の夫の猪熊さん役)がゲストで登場(メインはあがた森魚の歌)。そのためだと思うけれど、この回の来場者には桔梗信玄餅のプレゼントがあった。まだ食べていないけれど、猪熊さんのレクチャーどおりに食べようと思って楽しみにしている。このレクチャーのシーンがめちゃめちゃおもしろかったけれど、ここは、松山ケンイチあがた森魚が向かい合って座って信玄餅を食べようとしているところを横から撮っていて、猪熊さん推奨の食べ方がいまいちよく見えないのがポイントである。はたして正しく食べられるだろうか。