先日、読みたいと書いた(id:xiaogang:20071206#p1)とおり、『行人』読了。
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/04/16
- メディア: 文庫
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- 語り手である二郎の一人称が「自分」であることに気づいて驚愕。自衛隊キャラでも体育会系キャラでもないのだが。
- 漱石版『兄貴の嫁さん』。
- 漱石の病気体験披露小説。胃潰瘍は三沢(と芸者)に、神経衰弱は兄・一郎に。特に一郎は、漱石自身の体験が生々しく描かれているのではないかと思う。
- 二郎の、いまひとつ男性として魅力が感じられないところと、傍観者であると同時にロマンスの主人公であるというところが『三四郎』を連想させる。
- 途中まで、あらぬ嫉妬にさいなまれる現代的な男であった一郎の悩みが、Hさんの手紙の段になるともっと抽象的なものになってしまってつまらなくなった。「ちょっとヘンだけど、本人は真剣」みたいに、Hさんの口を借りて漱石が自己弁護しているようなのもちょっとイヤだ。
- 全く記憶にないのだが、鎌倉が出てきた。一郎とHさんが滞在するところ。紅が谷という地名は知らなかったが、材木座四丁目で九品寺の近くとか。うーむ。今度行ってみよう。
- 紅が谷のところで、(浜から)「往来へ出た時、私はゆきつけの菓子屋へ寄って饅頭を買いました。」(p. 389)というところも気になる。どこだろう?
- 漱石が描く人物は、男性より女性のほうが、善人より悪人のほうが魅力的だと思う(この小説には悪人は出てこない)。
- 小説を読むとつい配役を考えるのだが、これは主要な人物のイメージがいまひとつ抽象的なので難しい。とりあえず、Hさんは夏川大二郎だと思った。
- 兄弟も夫婦も本物、というところで、一郎=中村錦之助、二郎=中村嘉葎雄、お直=有馬稲子、というのはどうでしょう?
- お直が三原葉子で、「いま帯を解いているの、うっふん」とか言われたら、それはそれで『兄貴の嫁さん』っぽくていいと思う。