実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『アイ・イン・ザ・スカイ(跟蹤)』(游乃海)[C2007-16]

今日の1本目、東京フィルメックス5本目の映画は、游乃海(ヤウ・ナイホイ)監督の『アイ・イン・ザ・スカイ(原題)』。『PTU』[C2003-27]に続く、「香港警察の知られざるお仕事」紹介映画第二弾(いや、ほかにももっとあるのかもしれないが)。今回紹介されるのは、監視と尾行を専門とする、刑事情報科跟蹤隊、俗称“狗仔隊”。隊長の任達華(サイモン・ヤム)が新人の徐子珊(ケイト・ツイ)に仕事を教える「任達華の命がけ新人教育映画」でもある。『野良犬』[C1949-07]をはじめとしてOJT映画はけっこう多いが、任達華が徐子珊に教えるという形態をとりながら、観客にも狗仔隊の仕事を知ってもらうという点がユニークである。

『Exiled 放・逐』[C2006-41]に続いて任達華と林雪(ラム・シュー)が、『ドラマー』[C2007-15]に続いて梁家輝(レオン・カーファイ)が出ている。林雪は食べ物と女に目がないので似たような印象だが(性格はけっこう違いそうだが)、任達華と梁家輝は正反対の役。任達華はまたしてもかっこ悪い役だが、『Exiled 放・逐』とは全然別のかっこ悪さで、最初はアップにならないと任達華とわからないほど。この役が『SPL/狼よ静かに死ね』[C2005-32]みたいにかっこよくても困るんだろうが、なにもあんな腹の出たオヤジでなくても…。任達華と知っているわたしたちは、徐子珊の肩に手をまわして慰めても気にならないが、劇中の徐子珊の立場でみると微妙である。性格は、これまた『Exiled 放・逐』とは正反対のいい人。

梁家輝も、すぐ切れて手が出る『ドラマー』での役どころとは反対に、几帳面で注意深い役。こちらの役のほうが合っていると思うが、またしても悪役の強盗団のボス。たまには二枚目役も見たい。情報分析班のボスを演じていた人はよく出ている人だと思うが、川津祐介にしか見えなかった。

やがて追われる立場になる梁家輝と、追う立場になる任達華と徐子珊が偶然同じトラムに乗り合わせていたという冒頭から、興味と緊張がずっと持続するおもしろい映画。梁家輝の役目が狗仔隊と同様であり、しかも非常に優秀であるところをはじめ、対称性とか繰り返しが非常に巧みに配置されている。尾行シーンなど、街のなかでの撮影が多いのも魅力である。

狗仔隊の隊員は、上下の区別なく動物の名前のコードネームで呼ばれている。任達華は狗頭で、徐子珊は豬女(そのままだとブタ女だけど字幕では子豚ちゃん)。私のコードネームは熊猫(パンダ)でお願いします。