実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『直撃地獄拳 大逆転』(石井輝男)[C1974-26]

今日は『雨の味』を観たらさっさと帰る予定だったのに、J先生が美容院に行くというので不満たらたら。ところがちょうどシネマヴェーラで『直撃地獄拳 大逆転』(映画生活/goo映画)をやるとわかって上機嫌。はなまるうどんでしょうゆの中をかきこんで、シネマヴェーラ渋谷へ急ぐ。ニュープリントだし、二本立ての2本目だし、もう席がないんじゃないかとマジで心配したのに、行ってみたらすいていた。始まる直前に、見渡すかぎりおんなのこがいない(女はいるが格闘技系とかそういう意味ではなくて)ことに気づいてあせる。「まわりじゅうおっさんな不安」の中で始まった映画は、本篇中のショットをつないだタイトルバックが妙にエロく、「実はエロ映画?」とさらに不安を高めたが、実はほとんどすべてのエロシーンを総動員していたことがあとで判明した。

直撃地獄拳 大逆転 [DVD]

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映画は『直撃地獄拳』の続篇的な位置づけだが、前作は観ていない。すごくおもしろかったが、あまりにバカバカしいのではつけないでおこう。主演は千葉真一佐藤允郷硏治。このメンツなら迷わず郷硏治なのだが、脇役で悪役のときはあんなにクールなのに、主役で悪役でないとなると急にコミカルになって悲しい。そういう映画なんだから仕方がないが、郷硏治は三人の中でも最もアホな役割で、小津映画でいえば北竜二の役どころ。マンホールに入ってうんこにまみれたり、背中を焼かれたり、鼻水たらしたりとさんざんである。いちばんおもしろいのは接着剤で手がテーブルにくっついてしまうところ。とれないのでテーブルを手の形に切るのだが、郷硏治の出番のたびに、そのテーブルの破片が手と同じきれいな形になったりうすくなったりしていって、しまいにはなくなるところがなにげに手がこんでいてよかった。ちなみに、千葉真一が愛用しているこの接着剤がこの映画の主役であり、どうやってとれたかの説明はない。

池部良も出ていて、映画にニセのまじめな雰囲気と高級感を出すのに成功しているが、丹波哲郎も出ていたのが嬉しい驚きだった。しかもただのじいさんかと思わせて、実は100%タンバな役。秘書の志穂美悦子も実は香港警察だったが、だからといってその上海雑技団みたいな格好は何ですか? 最後は『網走番外地[C1965-09]のパロディで、嵐寛寿郎まで出ているのがすごい。

ちなみにこれは「スポーツする映画たち」という特集。スポーツの映画ってありそうでなかなかないが、ランナップを見ると格闘技が多くてなんとなく納得。『直撃地獄拳 大逆転』は空手映画だと思っていたらそういうシーンは意外に少なく、これをスポーツ映画と呼ぶ人も滅多におるまいが、そこがこのプログラムの楽しいところでもあろう。今年は、特集上映もないのに石井輝男映画をもう5本も観ていて、我ながらエラいと思う。この特集では、デビュー作の『リングの王者 栄光の世界』も上映されるが行けそうにない(宇津井健のために有休は取れない)。次の「グラインドハウス A GO GO! タラちゃんとゆかいな仲間たち」では『徳川女刑罰史』があるのでこれは行かねばなるまい。