実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ガルシアの首(Bring Me the Head of Alfredo Garcia)』(Sam Peckinpah)[C1974-21](DVD)

今日はフィルムセンターで『ラブホテル』[C1985-43]が上映されるので、久しぶりにスクリーンで観たかったのだが、昨日休出したのでのんびりして疲れをとることにした(お休みだと起きた時点ですでに疲れなどとれているわけだが)。そのかわり、ぜったい何か有意義なものを観てやるぞと心に決めていくつか候補を挙げ、選んだのはサム・ペキンパーの『ガルシアの首』。たぶん買ってから一度も観ていない(持っているのはこれ↓ではなくて、もっと前に出たもの)。

大まかなストーリーと、メキシコの乾いた空気と、すごくよかったことしか憶えていなかったので、初見のように楽しめた(と同時に憶えていないことがショックである)。いちばんの見どころは、三度ばかりある、いきなり始まる、スローモーションをまじえた激しい銃撃戦のシーンだ。しかしそれ以上に印象に残るのは、やはりメキシコの乾いた空気と砂ぼこりである。この映画はロードムービーでもあって、特に後半、エリータ(イセラ・ベガ)が殺されてひとりになった(というかガルシアの首とふたりになった)ベニー(ウォーレン・オーツ)が、ぶつぶつ首に話しかけたりしながら車で走っているところがとてもいい。

殺されるべきアルフレッド・ガルシアが、物語とは関係なくすでに死んでいるという設定や、彼がどんな男だったのか、ベニーやそのほかの登場人物とは具体的にどのような関係だったのかが描かれない点がユニーク。友情といったセンチメンタルな理由づけではなく、遭遇する出来事の連鎖によって運命的につき動かされつつ、ベニーが復讐(のようなもの)に自然に向かっていくのがいい。主人公が特にハンサムでもないくたびれた男なのもよく、たとえば梁家輝(レオン・カーファイ)などにこういう役をやってもらいたいものである。

ちょうど今日はシネマヴェーラ渋谷で『ガルシアの首』をやっている。今回の「ユナイテッド・アーティスツの栄光」特集には行かないまま終わりそうだけれど、いくつか魅力的な作品を上映している(観たいと思うのはすでに観たものばかりだ)。2本立てだが、『ガルシアの首』と『ロング・グッドバイ[C1973-17]という史上最強の組み合わせがなぜかないのが残念だ(別々なら2本とも今週まだチャンスがある)。