実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ドッグ・バイト・ドッグ(狗咬狗)』(鄭保瑞)[C2006-34]

二本目は、新宿武蔵野館で鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の『ドッグ・バイト・ドッグ』(公式/映画生活/goo映画)を観る。

殺人マシーンとして育てられた陳冠希(エディソン・チャン)が、裴唯瑩(ペイ・ペイ)と出会って人間性を獲得する(あるいは表出する)過程と、父のことでトラウマをもつ李璨琛(サム・リー)が、陳冠希の暴力に接するうちに人間性を喪失していく過程を並行させながら、二人の対決を描いた映画。すごくおもしろい(というか衝撃的な)映画が作れそうな題材であるが、私はいまひとつ乗れなかった。

その理由を考えてみると、三人の背景が特異すぎて、設定自体が説明的に感じられること。全体に余裕や余韻がないため、ストーリー展開がダイジェスト版のように感じられてしまうこと。非常な暴力を描いていながら、ハードボイルド的あるいはノワール的なクールなタッチではなく、(悪い意味での)メロドラマ的なつくりであること。意味なくパンするキャメラや盛り上げる音楽もそれを助長している。

陳冠希はなかなかがんばっていて、無表情とメイクによって顔にいつもの甘さがないのがよかった。

とんきでひれかつを食べて帰る。