実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『温泉女医』(木村恵吾)[C1964-32]

台風が接近しており、雨が降って寒い。こんな日は温泉にでも入ってのんびりしたいということで、ラピュタ阿佐ヶ谷の「映画×温泉 湯けむり日本映画紀行」(公式)へ行く。温泉の出てくる映画特集で、こういう特集は観に行くのも楽しいが、プログラムを組むのがいちばん楽しいだろうと思う。

最初の温泉は伊豆で、木村恵吾監督、若尾文子主演の『温泉女医』(goo映画)。老齢の医者(菅井一郎)が一人しかいない温泉町に、代診として若尾ちゃん扮する女医がやってくるという話。てっきりセクシーな白衣を着た若尾ちゃんが色仕掛けで患者を獲得するお話かと思ったら、若尾ちゃんはけっこう堅めのインテリ女性で(自転車も「おばさん乗り」していた)、ただの人情喜劇だった。

若尾ちゃんだけでなく三原葉子まで出ている(もちろん温泉芸者)というのに、ロマンスもお色気もエロも足りない。最後に若尾ちゃんとくっつく菅井一郎の息子(丸井太郎)は、太っていて、養蜂家で、養蜂園の隣にある孤児の幼稚園の園児の世話をしているという、「あんたは清水宏ですか?」という男。全然ロマンスがないのでなんだか物足りないが、元手なしで稼ぐために開業医の家に婿入りするというのはよくある話なので、これはその逆ヴァージョンであり、すべては若尾ちゃんの策略なのかもしれない。

お色気といえば、旅館の主人の中村鴈治郎が、「今度また孫みたいな若い女房もらいましてね」という役で、「あの方」のおクスリを飲んだりはちみつを飲んだりしているのがおもしろかった。妙なところに妙なギャグがちりばめられていて、一番笑ったのは、丸井太郎が、親友の旅館の若旦那(山下洵一郎)と半玉(姿美千子)との仲をとりもとうとするシーン。丸井太郎と姿美千子が話しているところで、話を聞きながらビールの空き瓶をもてあそんでいたら、姿美千子の指が入って抜けなくなる。ほかの観客には別にウケていないようだったが、なぜか私には大ウケだった。