バンガロールに来ちゃったの

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「物語映画の時空間分析−小津映画を素材として−」(佐藤大和)

情報処理学会の第74回人文科学とコンピュータ研究会(公式)で発表された論文「物語映画の時空間分析−小津映画を素材として−」を読む。この論文だけを電子版でいただいたので本ではないのだが、『人文科学とコンピュータ研究報告』(2007-CH-74)に収録されているはずのものなので、[本]カテゴリにしておく。

小津安二郎監督の映画を分析し、その時間構成と画面構成について検討したもの。分析対象は、『麦秋』(asin:B0009RQXK0)、『東京物語』(asin:B0009RQXIC)、『彼岸花』(asin:B0009RQXIM)、『お早よう』(asin:B0009RQXIW)、『秋日和』(asin:B0009RQXJ6)、『秋刀魚の味』(asin:B0009RQXJG)の6本。この研究は、東工大21世紀COEプログラム「大規模知識資源の体系化と活用基盤構築」(公式)の一環だということで、お金を貰ってこんな楽しいことができて「大学っていいなあ」というのが素朴な感想だが、なかなか興味深い内容だった。

まず時間構成については、小津映画の平均ショット長は、前二作では約10秒、後四作では約7秒で、全区間にわたって安定しており、それは、会話ショットの長さがばらばらでも、会話の最後に置かれた状況設定ショット(登場人物の全景)の長さを調節することで一定の平均長を保っている、というもの。これは朝日新聞でも取り上げられていたので、ご存じの方も多いかと思う(「小津映画 カットの平均秒数、場面ごとに統一」(LINK)。

計算してやっていたとも思えないので、そのような一定のリズムが体の中にあって、感覚的にできていたかとも思われ、編集作業はどのように行われていたのか、興味はつきない。今回の分析対象は戦後の作品のみだが、戦前からのすべての作品を分析してみたらどうなのだろうか。どのあたりからこういった特徴が顕著なのか興味がある。また、著者は、小津映画のショット構成を

・ブラケット・ショット(opening)
・状況設定ショット(全景)
《・ポートレート・ショット(複数)
・状況設定ショット(全景)》
《 》の繰り返し
・ブラケット・ショット(closing)

と定義している(ブラケット・ショットはいわゆるカーテンショット)。時間構成の特徴の確立は、このようなショット構成の確立と連動していると思われる。全作品のショット構成を分析し、時間構成との対応がどうなっているのかも知りたいところである。

次に画面構成については、登場人物などの位置が、画面全体で見ると黄金分割比によって区分される点であり、壁などで区切られた空間で見るとその中心であるというもの。こちらは著者も指摘しているとおり、意図的にやっていたのだと思う。ここで気になるのは、「動くヤカン」の位置。あのヤカンはきっとそのような位置に都度動かされていたのではないか。ぜひチェックしてみなければと思う。