実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『インビジブル・ウェーブ(Invisible Waves)』(Pen-ek Ratanaruang)[C2006-29]

気がついたら2ヶ月も映画を観ていないので、今日は絶対に映画を観ると決めて出京。新宿へ行くと、東口にルミネエストというのができていたが、御用達のチケット売り場がなくなっていてげきいかり。しかたなく伊勢丹会館のチケットぴあへ行くと、発券の人と一緒に並ばされてさらにげきいかり。シネマート新宿で整理番号をもらい、セガフレード・ザネッティ(公式)でパニーニの昼ごはん。真っ白いパンツの上にトマトを落としてしまい、自分にげきいかり。

シネマート新宿に戻り、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督の新作、『インビジブル・ウェーブ』(公式/映画生活/goo映画)を観る。上映前に『西遊記』の予告編があり、深津ちゃんファンのJ先生は狂喜乱舞していたが、私は背筋が寒くなった。

『インビジブル・ウェーブ』については、浅野忠信主演のタイ映画という程度の認識だったが、タイ人はほとんど出て来ず、日本人がたくさん出てきて少し戸惑う。舞台も、タイ(プーケット)にたどり着くまでにかなり時間がかかる。冒頭、浅野忠信が住んでいるところが「どうも澳門(マカオ)っぽいなあ」と思っていたらやはり澳門で、ひとりでほくそえんでいたのに、浅野忠信がご丁寧にも「澳門に住んでる」と台詞で言ってしまってがっかり。香港・澳門ロケは、石段を効果的に使っていてなかなか印象的だが、ピークトラムが出てくるのはいささかベタな感じもする(登場のしかたは悪くないけれど)。

かなり細部に凝った映画で、特に船室のシーンの収納式ベッドのエピソードなど、妙なリアリティがあって楽しめた。一方で、そういった細部へのこだわりが多少やりすぎに感じられるところもあり、そのせいもあってか主内容の印象がうすい。その理由を考えてみると、冒頭に出てくるボスの妻に全然魅力がない、ということに尽きる気がする。ろくでもない女にしか見えないので殺されても気の毒に感じないし、浅野忠信も彼女を真剣に愛しているようには見えなかった。そのため、彼女を殺したことによる罪の意識とか、彼女を失った喪失感とか、そういったものを抱えているようには感じられない。また、姜惠貞(カン・ヘジョン)が最初の登場シーンであまり魅力的に映らなかった(サングラスをかけていたか何かで素顔を見せていなかったと思う)のも、理由のひとつかもしれない。

撮影は杜可風(クリストファー・ドイル)。悪い意味でのドイルっぽさがなく、昔のドイルのような空気感があって、スタイル的には好きな映画。フォーカスフィルムも出資していて、曾志偉(エリック・ツァン)とかMaria Cordero(マリア・コルデーロ)とか、地味で豪華な香港からの出演者が印象的。

ところで、『インビジブル・ウェーブ』という表記のあまりのダサさ、間抜けさには脱力する(特に自分で入力すると感じる)。複数形をどうするのかという問題は置いておくとして、『インヴィジブル・ウェイヴ』でしょう、やっぱり。