実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『小早川家の秋』[C1961-04]の県営奈良競輪場

小早川家の秋』の小早川家はどこにあるのか。脚本にも書いてないし、はっきりとは明示されていないようだ。モデルになった酒屋が伏見だということで、ロケ地ページ(LINK)には「舞台は伏見」と書いているが、関西の方から「絶対に伏見ではない。灘だ」というメールをいただいたこともある。しかし『京都 絵になる風景 - 銀幕の舞台をたずねる』[B1220]によれば、ロケは伏見で行われたようだし、私が不審に思っていた「京都へ行く」という表現も、昔から伏見では使われているらしい。そういうわけで、舞台は伏見ということに落ち着きそうだ。

しかし、映画の中に「西大寺道」という道標が出てくることもあり、もしかしたら舞台は奈良かもと思い、少し調べたりしていた。そこでわかったのは、この「西大寺道」のショットのあとに出てくる競輪場が、県営奈良競輪場だということである。一度倒れて回復した中村雁治郎が、イサムちゃん(ここでは正夫)をだまくらかして家を抜け出し、浪花千栄子と落ち合うところだ。昔なじみのふたりは、たしか競輪場で再会したという設定だったはず。この競輪場がどこかなんて考えてみたこともなかったが、京都や奈良には競輪場などないと思い込んでいたような気がする。雁治郎の「大阪行こう」という台詞とは矛盾するけれど、どこか大阪のあたりだとなんとなく考えていた。

現在の県営奈良競輪場は建て替えられていて、『小早川家の秋』に出てくるものを見ることはできない。奈良競輪場は1950年に開設されたらしいが、いつ建て替えられたかという情報は見つけることができなかった。現在の建物もすでにかなり古びていて、映画とあまり変わらない雰囲気が感じられる。スタンドもこぎたなくて、造り酒屋の大旦那と旅館の女将がいい着物を着て観戦するには、ふさわしくなさそうな場所だった。


西大寺道」の道標も探してみたが、これは見つからなかった。あちこちに、「歴史の道」というもう少し小ぶりの道標が建てられているが、このどれかに替えられたのかもしれない。