実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『悪魔の手毬唄』(渡辺邦男)[C1961-33]

阿佐ヶ谷へ移動し、ラピュタ阿佐ヶ谷高倉健主演の『悪魔の手毬唄』(goo映画)を観る。「ミステリ劇場へ、ようこそ。【第2幕】」(公式)の一本。

今日の午後何を観るか、実はかなり迷った。フィルムセンターでは、16時から鶴田浩二様ご出演映画『いとはん物語』が上映される。私の好みとしては
   鶴田浩二 > 高倉健
   伊藤大輔 >> 渡辺邦男
なので、迷わずフィルムセンターへ駆けつけるのが本当だ。しかしながら、最近「プチ健さんブーム」だし、なにより「健さん金田一耕助ってどんなだろう?」という興味、正確にいえば恐いもの見たさを抑えきれない。私は横溝正史ファンでも金田一耕助ファンでもなく、これまでに誰が金田一を演じたかといったことにも詳しくないが、健さん金田一というのは初めて聞いた。昔からレア物、ゲテモノには弱い。

最初の殺人事件の後、シーンは田舎の路線バスの中。それを追い抜いていくオープンカー。「『有りがたうさん』かよ」という一瞬のツッコミのあとに浮かぶ疑念。「まさか、あれが?」袴でスポーツカーかと思いきや、健さんは顔も髪型も服装も、いつもの、ふつうの。あのおなじみの金田一の扮装をした健さんへの期待は、あっさりと裏切られた。短髪でアスコットタイまでしめて、ギャングとあまり変わらない。1961年の映画だから、「第一期健さん」である。よくは知らないが、このころは多くの映画に主演級で出ていたものの、人気はいまひとつだったらしい。この映画でも、それはなんとなく納得できる。ポイントは、「第一期健さん」は寡黙ではないということだろう。この映画でも、健さん金田一は自分の推理やその根拠を饒舌に披露してみせる。いささかうるさい。

ニュー東映」のマークが、いやがうえにもいかがわしい雰囲気を盛り上げて始まるこの映画、健さんと「やまりん」こと山本麟一以外、見覚えのある顔や名前はごくわずか。そのやまりんは後半しか登場しないが、終始わめき散らしていて全くいいところがなかった。

原作は読んでいないし、あらすじも憶えていなかったが、この映画の物語はかなり単純で、観終わって「こんな話じゃなかったはず」と思う。手毬唄の歌詞が事件に絡まないし、横溝正史ものといえば複雑な血縁関係が必須であり、もっとエロい。少し調べてみたところ、原作のお話はかなり違っていて、映画は一部の設定をとっただけらしい。これではあんまりなので、もう少し原作に近い雰囲気にしてほしかった。

「日本映画データベース」のココには、歴代金田一耕助の一覧がある(すばらしい)。片岡千恵蔵河津清三郎池部良もやっているようで、これらも観てみたい。ちなみにスカパーで来月、千恵蔵の『三つ首塔』が放映される。南原伸二(南原宏治)も出ているようだし楽しみだ。

映画のあとは、とんきでひれかつ定食を食べて帰る。