実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『歩道橋(天橋不見了)』(蔡明亮)[C2002-Vs]

水曜日にはYesAsiaから“太陽雨(Rain Dogs)”(香港版)、“盛夏光年(永遠の夏)”(台湾版)、“父子”(香港版)のDVDが届き、今日は楽天ブックスから『楽日』、『迷子』、『西瓜』が収録されたDVD-BOXが届く。さっそく、DVD-BOXにおまけで入っている『歩道橋』を観る。

ツァイ・ミンリャンDVD-BOX  「楽日」「迷子」「西瓜」

ツァイ・ミンリャンDVD-BOX 「楽日」「迷子」「西瓜」

『歩道橋』は、『ふたつの時、ふたりの時間』(asin:B00007K4RH)の続編と言われていて、パリから戻った陳湘蒞(チェン・シャンチー)が李康生(リー・カンション)を探しに台北車站(台北駅)前へ行ってみたら歩道橋がなくなっていた、というところから始まる短篇である。最初のショットは台北車站近くの新光三越前。かつて歩道橋があったあたりを呆然と眺めているらしい陳湘蒞の後ろ姿を写したフィックス・ショットである。陳湘蒞もほとんど動かないこのショットは2分くらい続くが、歩道橋がなくなって彼女がいかに呆然としているかを雄弁に表している。私も2001年の夏に歩道橋がないのを発見して呆然としたので、彼女の気持ちはとてもよくわかる。なかなか秀逸なファースト・ショットだ。

これは『ふたつの時、ふたりの時間』の続編というだけではなく、『ふたつの時、ふたりの時間』と『西瓜』とをつなぐ映画だった。蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)はこの『歩道橋』をふまえて『西瓜』を構想した、というほうがより正しいだろう。これを先に観たら唐突に感じられたかもしれない小康のオーディション(?)・シーンも、『西瓜』を観たあとなら納得だし、ラストはなんと‘天邊一朶雲’のショットである。ほかに『河』で陳湘蒞と李康生が再会した新光人壽保険摩天大樓のエスカレータも出てきたりして、いろいろと連想が広がる。

これを観てあらためて気づいたのは、『ふたつの時、ふたりの時間』の中で小康の父親(苗天)が亡くなり、その後演じていた苗天(ミャオ・ティエン)本人も亡くなって、『青春神話』、『河』、『ふたつの時、ふたりの時間』と続いた小康とその両親の物語が終結し、陳湘蒞と李康生との恋愛物というか、「陳湘蒞が李康生を好き」という路線に変わっていったということである。もうすぐ公開される『黒い眼のオペラ』もこの路線だが、これがこのあとどのように変化していくのか楽しみである。

ところで私は“不散(楽日)”と“不見(迷子)”は台湾版DVDを持っているので、本来ならば『西瓜』だけ買えばよかった(特に『楽日』なんて台詞もほとんどないのだ)。ところがこの『歩道橋』はDVD-BOXのみの付録だというので、やむをえずDVD-BOXを買ったのである。しかし内容からいっても、『歩道橋』は本来『西瓜』の付録にすべきものだ。あまりにもアコギな商売だと思いませんか?