- 作者: ウルスラベーコン,Ursula Bacon,和田まゆ子
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 単行本
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上海に逃げたからといって安全が保障されたわけでもなく、インフレや家賃の高騰で生活は苦しく、暮らしていくだけでせいいっぱいである。ドイツでは貴族のような何不自由のない暮らしをしており、望んで上海に来たわけでもないので、習慣も衛生観念も違う異国での生活はギャップが大きかっただろう。それは理解できるのだが、それにしても、上海の印象は虹口は臭いとか馬桶(「壺」としか書いてないが)は汚いとかいったものばかり、お気に入りの場所はカフェ・ウィーンだけ、中国人が巻き込まれている戦争には全然関心がないというのはちと寂しい。
この本には訳註が全然ない。「指定地域」を示す地図もない。作者は馴染みのない場所や習慣などについて、自分の言葉で一生懸命説明しているのだが、それに対して適切な註をつけてあげれば、内容もより生きるし、読者にとってもわかりやすいだろう。残念だ。
なお、「指定地域」は、虹口といってもかなり東のほうの提籃橋監獄(現・上海市監獄)のあたりである。『時空旅行ガイド 大上海 Great Shanghai 1842〜1949』(ISBN:4795832730)や『上海歴史ガイドブック』(ISBN:446923205X)に詳しい記述がある。