バンガロールに来ちゃったの

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『ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記』(Ursula Bacon)[B1184]

ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記』読了。

ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記

ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記

当時十代前半の少女が体験したユダヤ人難民の上海生活を、のちに日記風に綴ったもの。前半はフランス租界でのそれほど悪くない日々が、後半は虹口のゲットー(「指定地域」)での辛い日々が描かれている。ユダヤ人難民の生活が具体的に書かれている点で、貴重な記録である。

上海に逃げたからといって安全が保障されたわけでもなく、インフレや家賃の高騰で生活は苦しく、暮らしていくだけでせいいっぱいである。ドイツでは貴族のような何不自由のない暮らしをしており、望んで上海に来たわけでもないので、習慣も衛生観念も違う異国での生活はギャップが大きかっただろう。それは理解できるのだが、それにしても、上海の印象は虹口は臭いとか馬桶(「壺」としか書いてないが)は汚いとかいったものばかり、お気に入りの場所はカフェ・ウィーンだけ、中国人が巻き込まれている戦争には全然関心がないというのはちと寂しい。

この本には訳註が全然ない。「指定地域」を示す地図もない。作者は馴染みのない場所や習慣などについて、自分の言葉で一生懸命説明しているのだが、それに対して適切な註をつけてあげれば、内容もより生きるし、読者にとってもわかりやすいだろう。残念だ。

なお、「指定地域」は、虹口といってもかなり東のほうの提籃橋監獄(現・上海市監獄)のあたりである。『時空旅行ガイド 大上海 Great Shanghai 1842〜1949』(ISBN:4795832730)や『上海歴史ガイドブック』(ISBN:446923205X)に詳しい記述がある。