実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『My Mother is a Belly Dancer(師奶唔易做)』(李公樂)[C2006-20]

東京国際映画祭第九日は朝から渋谷へ。Foodshowでパスタを食べて、シアターコクーンへ向かう。今日唯一の映画、映画祭最後の二十本目は、アジアの風で李公樂(リー・コンロッ)監督の『My Mother is a Belly Dancer』(公式)。

映画は、ベリーダンスを習いはじめた四人の主婦を描いたもの。四人の主婦といっても、同じ団地に住むということ以外、年齢も環境もバラバラ。いわゆる専業主婦は一人だけだし、ひとりは若いシングルマザー。中年の人も、スタイルは悪くないというところがちょっとずるい。それぞれの家庭の事情を交えながら、ベリーダンスを習うことによって、自分自身やまわりの人との関係を見つめなおしていくさまが描かれている。大スターも出ていない地味な映画ながら、笑いもありしんみりするところもあり、良心的な娯楽作といった感じだ。ただ、終盤になると、大切な人との関係の修復というテーマが前面に出過ぎて少し飽きた。

映画のなかのダンスシーンは、『暗殺の森[C1970-05]や『ブエノスアイレス[C1997-04]の例をひくまでもなく観客を魅了するものだ。しかしこの映画ではそうではない。上達したダンスを多くの人に見せるというシーンはないが、映画の観客に見せるシーンはラストにある。これがかなり長いのだが、けっこう退屈なのだ。監督がティーチインで「ベリーダンスに観客はいらない」と言っていたが、たしかにそのとおりである。

興味深かったのは四人が住む彩虹邨の団地の様子だ。バルコニーがレインボーカラーに塗り分けられた建物が並び、買い物も外食も習い事も、すべて団地の中で完結してしまう巨大団地は、ふつうの香港の街とは異なるものの、香港の街がそのまま入ったようなところもあっておもしろい。

それから、台詞の中に「パンダホテルのビュッフェがおいしいらしい」というのが出てきた。Panda Hotelとは、荃灣にある悦來酒店(公式)の英文名。その名のとおりパンダづくしのホテルで、私はその名につられてわざわざ泊まりに行ったことがある([風の中の熊猫 香港・澳門篇]に少し写真があります)。「お母さんの誕生日にどこでごはんを食べるか」という文脈だったので、出てくるのを楽しみにしていたが、結局家で鍋を食べることになって出てこず、残念でした。

上映後、李公樂監督をゲストにティーチインが行われた。