実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『上海狂想曲』(高崎隆治)[B1162]

『上海狂想曲』読了。

上海狂想曲 (文春新書)

上海狂想曲 (文春新書)

1937年8月13日から11月5日まで、第二次上海事変下の上海を、特派員として上海に渡った作家が書いたものを中心に描いた本。取り上げられている作家は、木村毅林房雄、榊山潤、吉屋信子など。上海というとどうしても派手な面やモダンな面ばかり注目されて、戦争を描いたものは少ないように思うが、この本は戦争の様子をよく伝えている。

この本が終わるころ、亀井文夫の傑作『上海 支那事変後方記録』が撮られたのだな、と思って念のためはまぞうを検索してみたら、なんとDVDが出ている(しかもとっくの昔に)。即お買い上げ。必見の映画なので、特別に写真付きで紹介しておく。

上海 支那事変後方記録 [DVD]

上海 支那事変後方記録 [DVD]

上海とは全然関係ないが、次の記述が気になった。日本人は、関東大震災のときも今も全然変わっていないようだ。「操作する側にとってはこれほど楽なものはない」というところなど、今の状況そのもの。情けない。

 関東大震災の時もそうだが、日本人というのは、冷静であるべき重大な時に、正確な判断ができない性格のようで、付和雷同的な面が多分にある。それは自分に自信がないということなのだが、自信のない者は権威の言動に動かされやすい。「朝鮮人が攻めてきた」などというバカげたことを頭から信じるような幼児性など、操作する側にとってはこれほど楽なものはない。もっとも、「朝鮮人が攻めて」きても不思議ではないようなことを日常的にやっていれば、そういう流言に惑わされるのも当然なのだ。(pp. 57-58)

ところでこの本は文春新書である。文春新書なんて恐くてなかなか買えない。家に帰って表紙を開いたら『美しい国へ』に変わっていた、なんてことがあったらどうしようかとビクビクしてしまう。