スカパーで録画してまだDVD-R化していない『犬猫』(公式)を観る。公開時、予告篇も観たし、よさそうな評判も聞いて、なんとなく気になってはいたが、「観に行こう」という決め手がないまま観ずにいた映画。
主人公のヨーコ(榎本加奈子)とスズ(藤田陽子)は、性格は正反対だが、いつも同じ男の子を好きになるので仲が悪い、という設定。だけど男の好みだけではなく、似ているところもたくさんある。だから時々同じような行動をして、それが繰り返しギャグみたいな独特の雰囲気を醸し出している。仲が悪いといっても、激しく憎んでいるとか、自分と関わりなく生きていってほしいとかいうのとは違う。かなり気になる存在であり、ある意味では好きであり、お互いのことをすごく理解しているという独特の関係。それがこの映画のひとつの魅力である。
日常を描いた、あまり起伏のないストーリー。登場人物たちのどうでもいいような日常を見つめつづける、ほとんど動かないキャメラ。外に出ると多用されるロングショット。私好みの映画である。好みだなあと思いながら、観ているときはそれほど圧倒的なものは感じなかったが、観終わったあとも映画が抜けない。これはいったいなんだろうと考えてみて、この映画の空気だということに気づく。これを映画館で観ていたら、この空気に包まれるという圧倒的な体験をするに違いないのだが、しょせんテレビの大きさや環境では、そういった体験はできない。だからこれまで、映画館で観なければそういう部分は抜け落ちてしまうと思っていた。だけどそうではなかった。この映画の空気は、映画館の場合とは少し違うけれど、じわじわと、しかし確実に私の中に浸透していたのだ。
一見、テレビ向きともいえるような題材だけど、これは一度は映画館で体験すべき映画である。絶対に映画館で観たい。そしてこの空気に浸りたい。どこかで上映されることを激しく希望する。