『ポスト〈東アジア〉』読了。
- 作者: 孫歌,陳光興,白永瑞
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 単行本
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一番興味深かったのは、
- 鄭鴻生:「台湾における中国イメージの変容」(pp. 77-90)
である。日本の台湾領有以前に生まれた祖父母の世代から、美麗島事件の後に生まれた新世代まで、その中国イメージがどのように変容してきたかを、政治的、社会的な背景から説明している。ずっと興味があったところがまとめられていてたいへんありがたい。また最近は、台湾独立と反中意識(政治的な面ばかりではなく文化的な面なども含めて)がセットのように語られることに、ずっと引っ掛かりを感じてきた。そのあたりにふれた部分を引用しておく。
六〇〜七〇年代の党外民主運動開始以来、二〇〇〇年の民進党政権実現に至るまで、新興の台湾独立運動は国民党版の新中国理念に一貫して反対し続けてきたものの、国民党が何十年来、中国共産党側を異化しながら主張し続けてきた反共親米路線については忠実な継承者であり続けてきたのであり、同時に独立派は六〇年代に展開された台湾版五四運動における反伝統の影響をも受けてきた。さらにそれは反共意識が九〇年代にその実質的な意義を失って以降も、逆説的にも、反中意識に転化されてしまっている。いいかえれば、台湾独立運動は実はかくも多くのラインを[国民党から]継承しているにもかかわらず、国共どちらのバージョンの新中国理念のみならず、中国そのものをも新旧問わず一概に拒否してきたのだ。ついにはこの空虚なる転換点において、なんと李登輝世代の「支那観」までもが召還されるに至ったのである。特に一九九〇年三月、李登輝が学生運動にかこつけて旧勢力を国民党指導部から放逐して以降、一挙に今日まで、「脱中国化」が進んできた。(p. 84)