実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『幌馬車の歌』(藍博洲)

『幌馬車の歌』を読了。台湾に興味をもつ人、台湾へ旅行に行く人は絶対読むべき必読の書だと思う。

幌馬車の歌

幌馬車の歌

基隆中学校長で、白色テロで殺された鍾浩東の半生を描いたノンフィクション。この作品は小説かノンフィクションか、という論争もあるらしいが、著者の言葉を借りれば、「小説形式を兼ね備えた非虚構性の文学作品」(p. 241)ということである。著者の説明や意見は一切なく、家族、友人、同僚等へのインタビューと、記録として残されている口述や政府関係の資料を、仮想的な座談会のように(対話しているわけではないのでこの表現は正確ではないが)並べることによって、鍾浩東の生涯が見事に表現されている。欲をいえば、登場人物が多いし、唐突に出てくる人物もいるので、登場人物一覧表のようなものがあるとよかったと思う。

鍾浩東が生まれたのは第一次世界大戦終結した1915年、絞殺刑で亡くなったのは朝鮮戦争が勃発した1950年。この本を読むと、日本の植民地統治、日中戦争、大陸における国民党と共産党の関係といったものが、台湾にいかに影響を与えてきたかということがよくわかる。また、台湾の戦後史に関して、私が誤解していたことがわかった。そのひとつは、二二八事件と白色テロとがかなり直結しているように思っていたが、決してそうではないということ。もうひとつは、1949年の国民党政府の台湾移転が、台湾の運命を決める決定的な出来事であったように思っていたが(もちろん現在または数十年後から振り返ってみればそうともいえるのだが)、そうではなくて、当時はまだ周辺の島では戦闘が続いていたし、台湾も時間の問題だとみられていた。決定的だったのは、1950年の朝鮮戦争の勃発だったということである。同時に、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『悲情城市』が、1950年代はじめまでを描いていながら、最後を1949年とすることで生じる歴史の誤りが、なぜそれほどまでに問題にされるのか、ということもなんとなくわかった。

謡曲の『幌馬車の歌』は、和田春子版のCDをもっている。『好男好女』の音楽に使われていたのと比べると、かなりアップテンポでけっこう陽気な雰囲気だ。

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