実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ノモンハンの鉄の墓場』(村上春樹)

ノモンハンの戦い』(ISBN:4006031270)を読んだので、村上春樹の『ノモンハンの鉄の墓場』(『辺境・近境』所収)を読み直してみた。

辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)

まず、自分が実際に旧満洲を訪ねたあとで読むと、かなり臨場感がある。私も鉄道で大連から哈爾浜まで行ったし、長春動植物公園でパンダも探した。もっとも、硬座での旅も快適だったし、パンダはすでにいなくなっていたのだが。一方、ノモンハンの記述はかなりあっさりしている。『ノモンハンの戦い』を読んでもう少し起伏のあるところかと思っていたが、写真で見るかぎりは平らな草原に見える。実際、小高い丘などはあるようだが、それがノモンハン戦争の記録にあるどの丘だとかいったことは、ほとんどわからないようだ。

気になったところが二点ばかり。「モンゴルの名もない草原で繰り広げられたその血なまぐさい短期間の戦争」(p. 166)というところと、「このあたりはもともとは、遊牧民が家畜を連れて季節ごとにあっちからこっちへと移動する「誰のものでもない」土地だった」(p. 199)というところ。『ノモンハンの戦い』のあとがきには、ノモンハン一帯にはもともと遊牧民が名づけた様々な地名があったことが書かれている。また訳注では、ノモンハン戦争の舞台になったバルガが、エスニックに複雑な場所であることが示されている(p. 15-17)。

ところで、私が海拉爾に行きたいのは、多分にこの『ノモンハンの鉄の墓場』の影響だ。

 ハイラルの街は僕に、どことなく開拓時代の町を思わせる。たぶん道路が広くて、どことなく埃っぽくて、空が高くて、平屋の建物が多いからだろう。そして何よりも、通りを行く人々の姿がどことなくワイルドな風情を漂わせているからだろう。(p. 187)

ものすごくよさそうでしょ?

海拉爾に惹かれるのは、もうひとつ、その名前の響きだ。同じように、ノモンハンやハルハ河にも惹かれる。モンゴル語の地名には、どこかソソるものがあるらしい。たしかモンゴル語は、日本人にとって最も簡単な外国語だったはず。ちょいと勉強してみようかな。