実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『うつせみ』(金基徳)[C2004-38]

午後は、金基徳(キム・ギドク)監督の『うつせみ』を観る(公式)。同じ恵比寿ガーデンシネマでは、今日から『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』も始まっている。整理番号をもらってから、カウボーイつながりでこちらを観るべきだったと気づいたが、すでに遅かった。

韓国映画で、名前だけで観る監督は5人くらいしかいないが、金基徳はそのひとり。初めて観たのはけっこう遅く、『春夏秋冬そして春』で、このときはかなり怪しいというか信用できないという印象を受けた。しかしその後、『悪い男』と『サマリア』がかなり気に入り、観るべき監督の仲間入りをした。

『うつせみ』は、よその家に忍び込んでユニークな行動をとる主人公、孤独な登場人物、少ない台詞といった点で、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)を連想させる作品。かなりユニークな内容で、娯楽映画ではないのに笑いどころも満載なので、全体としては面白かった。ただ肝心の主人公ふたりの結びつきみたいなところに、いまひとつ強い印象を受けなかった。『悪い男』や『サマリア』に比べて、印象に残るショットがほとんどなかったのが原因かもしれない。

ところでこの映画では、主人公が忍び込むどの家にも、家族の写真と洗濯板があり、ヴェランダに物干道具が常備されていた。これは標準的な韓国の家庭の装備なのだろうか。特に、今どき洗濯板があるというのが謎だ。それに洗濯って、あんなに力を入れて洗わないといけないものなんだろうか。海外旅行に行くと毎日手洗いで洗濯をしているが、あの10分の1も洗っていない。洗剤が行きわたってちょっとこすれば汚れなんて落ちるものと思っていたが、もしかしたら全然洗えていないのかも。

同じ恵比寿の東京都写真美術館ホールでは、張元(チャン・ユアン)監督、徐静蕾(シュー・ジンレイ)主演の『我愛[イ尓]〈ウォ・アイ・ニー〉』(公式)が今日から公開されている。私は2003年の東京国際映画祭で観たので(感想)、今回は観に行かないと思うが、これは(ヘビーだが)とても面白いというかいい映画なので、ぜひとも多くの人に観に行ってほしい。いつも思うことだが、映画祭で上映された映画が一般公開される場合、その間に何年も経っていることが多い。特にマイナーな映画の場合、ある映画を強く支持してそれを広めようとする層は、その映画を映画祭で観ることが多いので、一般公開されるときにはすでに過去のものになってしまっている。だから、本来なら初日に駆けつけるような人たちがあまり来ないまま、地味に公開されて終わってしまうことが多い。先週観た『SPL/狼よ静かに死ね』(id:xiaogang:20060304#p3)みたいに半年くらいで公開されれば、まだ記憶も新しく、人に薦めたりする可能性も高い。配給会社はそのあたりをもう少し考慮してほしいと思う。