実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『日本映画史の展開 小津作品を中心に』(冨士田元彦)

『日本映画史の展開 小津作品を中心に』を読み終わる。

日本映画史の展開―小津作品を中心に

日本映画史の展開―小津作品を中心に

このタイトルを見れば、小津安二郎の作品を中心に日本映画史を論じる本だとふつうは思う。だけど実は、これまでにどこかに書いたものを寄せ集めた本であり、その中で小津作品を論じたものが多いというのにすぎない。それって詐欺じゃないの?

小津作品についていえば、小津が時代を見る目についてなど興味深い指摘もあるし、同時代のものを含めたいろいろな批評も紹介されていて、それはそれでおもしろいが、ひとつひとつが浅いというか、「えっ、もう終わり?」という感じで終わってしまう。しかも寄せ集めだから、それが次につながっていかないし、それぞれの小論がより大きな議論を構成するわけでもないので、なんだか物足りない。

それに蓮實重彦氏の影響を受けすぎ。「『麦秋』を読む」では、二段落目からいきなり「しかしここでも小津は階段を映さない」(p. 58)って、ちょいとそれは唐突じゃないですか?(笑ってしまった。)