実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『SPL/狼よ静かに死ね(殺破狼)』(葉偉信)

去年の東京フィルメックスで観損ねた葉偉信(ウィルソン・イップ)監督の『SPL/狼よ静かに死ね』(公式)をやっと観ることができた。『県警対組織暴力』などを思わせるような、悪を滅ぼすために警官が法を犯す、実録風アクション映画。甄子丹(ドニー・イェン)のアクションの見せ場になると、実録風の雰囲気が一変して、非リアルな空間が出現する。だけどそれはそれでよろしい。

とにかく任達華(サイモン・ヤム)がかっこいい。後半こそ甄子丹のアクションの見せ場が目立つが、もう最初の10分くらいで、「任達華、超かっこいい、もう最高」とテンションが上がりまくる。一応この映画の主演は甄子丹のようだが、物語上の主人公は任達華である。クレジットでは、主演が甄子丹で、二番目が洪金寶(サモ・ハン)と任達華。アクション映画としてみればまぁ妥当な順序。だけど日本版のポスターは、「ドニー・イェン サモ・ハン」のみ大書きされている。納得いかない。もしかしたら、甄子丹、洪金寶ファンのアクション好き男性がターゲットなのかもしれないが、それではあまりにもったいなさすぎる。女性のみなさん、任達華を観に映画館へ行きましょう。

甄子丹も、それほど「俺はドニー・イェンだ」という感じでもなく、わりとクールに好演している。アクションはもちろん見せ場たっぷり。洪金寶についていうと、これまでの香港映画は悪役がしょぼすぎると思っていたので、洪金寶クラスが出てくるとさすがに貫録があっていい。だけどこの映画の洪金寶は、アクションはともかく、たたずまいに感じられる恐ろしさといった点で、存在感としてはいまひとつだったと思う。

この映画のよくないところは、不要な回想シーンを入れてわかりやすく語りすぎる(香港映画には超ありがち)ところ、音楽が盛り上げすぎなところ、安易に父子の人情話を絡めすぎているところなど。カメラワークも時々気になった。これらの点を改善すれば、もっとクールで、もっと引き締まった映画になるのに。