実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『結婚相談』

沢村貞子が超クールな必見作」とJ先生が言うので、『結婚相談』を観に朝からラピュタ阿佐ヶ谷へ。中平康監督、芦川いづみ主演。開演30分前からチケット売り場は長蛇の列で、立ち見まで出て開演が遅れるほどの盛況ぶり。清純派スター、芦川いづみが娼婦になってしまうという「成人映画」のためか、中平康レトロスペクティブでも上映されなかったレアものであるためか、はたまた沢村貞子人気のためか(まさか)…。

冒頭、美顔器具を頬に当てる芦川いづみのアップに、「私もとうとう、30になってしまったわ」のモノローグが強烈。30歳の未婚女性が結婚をあせるというのは、当時はかなりリアリティがあっただろうが、芦川いづみくらい綺麗な人が紹介される人誰とでも結婚を望み、簡単にじいさんと寝てしまうというのは、今観ると全くリアリティがない。一方、この設定には、男性スターの相手役を中心にやっていた美人女優が、30歳をすぎて女優としてこれからどうするのかという問題が重ねられているように見える。こちらのほうは現在も女優にとって大きな課題であり、芦川いづみもこの後数年で結婚引退してしまったことを考えると、かなりリアリティがある。

沢村貞子は、あらかじめわかっていて観るとそれほど怖くなかった。芦川いづみに対して強く出てみたり同情するふりをしたりしながらハメていく手口を、客観的に楽しませてもらった。絶妙のタイミングで美顔器具の宣伝カーが通り、「あなただけはと信じたの〜♪」という歌が流れるのが笑えた(例によって歌が一日頭から離れなくて困った)。