バンガロールに来ちゃったの

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2011年11月01日のつぶやき

『ウォーリアー&ウルフ(狼災記)』(田壯壯)[C2009-50]

シネマライズで、田壯壯(ティエン・チュアンチュアン/ティエン・ジュアンジュアン*)監督の『ウォーリアー&ウルフ』(公式)を観る。原作は井上靖の『狼災記』だが未読。原作小説が『狼災記』で映画の原題も“狼災記”なのに、わざわざカタカナタイトルをつける配給会社の意図が全くわからない。

秦の時代の崑崙山脈あたりを舞台にした時代劇。司令官の陸沈康(オダギリジョー)、将軍の張安良(庹宗華(トゥオ・ゾンホワ*))、ハラン族の女(マギー・Q)の三角関係を描いたもの。前半は、陸沈康と張安良のなれそめからその後のラブラブぶりが描かれるのだが、ここはけっこうわかりにくい。ただでさえ顔を判別しづらい時代劇なのに、画面が異様に暗く、人物を見分けにくい。時間軸を交錯させているのは、ふたりのラブラブぶりを効果的に描くためだと思うけれど、主要な人物はこのふたりだけだということを最初にはっきりさせておいてくれないと、ついていくのがしんどい。また、時おり状況説明の字幕が縦に出るのだが、気づくのが遅れるうえにすぐに消えてしまって読み切れない。

張安良と離れた陸沈康が、ハラン族の女とひたすらやりまくる後半になると、今度は時間軸の交錯もほとんどなく、かなり単調な展開になる。マギー・Qに魅力が感じられないため、エロティックな盛り上がりに欠けるのが問題。異民族に見えてかつ脱げる人ということでマギー・Qになったのかもしれないが、顔はどうせよく見えないし、舒淇(スー・チー/シュー・チー*)とかだったらよかったのに。

その後ふたりが狼になってしまうところは、「ジョーさん、しっぽが生えてるわよ」「おやマギーさん、ずいぶん毛深くなっちゃったね」といった展開を期待したのに、一挙に本物の狼になっていた。最後の、二匹の狼と庹宗華とのシーンはなかなかよかったけれど、狼ってほとんど犬と区別がつかないので、見た目のインパクトに欠ける。

ところどころ挿入される風景や外でのシーンは、人がシルエットのように見えるコントラストの強い映像や、墨絵のような雪のシーン、大砂塵など、映像がとても美しく、これがいちばんの見どころ。

『犬猫』(井口奈己)[C2004-49]

キネカ大森で、井口奈己監督の『犬猫』を観る。以前、録画で観て気に入っていたもので(id:xiaogang:20060721#p2参照)、やっとスクリーンで観ることができた。

犬猫 [DVD]

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犬的キャラクターのヨーコ(榎本加奈子)と、猫的キャラクターのスズ(藤田陽子)の同居生活を描いた映画。このふたりの女の子のキャラクターや独特の関係がいい。一見、ヨーコは冴えなくて暗く、スズは明るくかわいくて男の子ウケするように見えるけれど、それほど単純ではない。ヨーコは、前の男を引きずっているところは暗いけれど、無愛想で、ボーダーのTシャツを着ていて、けっこう好きなタイプ。スズも、男の子ウケするといってもオンナオンナした女性から嫌われるタイプではなく、ショートヘアのすっきりした顔立ちで、真赤なダッフルコートがかわいすぎて萌え死にしそう。古田(西島秀俊)をグーで殴るのもいい。

ふたりは幼なじみだが仲が悪く、それはたぶん、ヨーコの好きな男の子をいつもスズが横取りするからだと思う。それなのに、「いつも同じ男の子を好きになるから仲が悪い」とスズがしれっと言うので、「あんたが言うか」と思うんだけど、なんだか憎めない。仲が悪いといっても、いつも険悪な雰囲気だとかいがみ合っているとかいうわけではなく、かといってベタベタと仲良くするわけでもなく、ほどよい距離を保ちながら、意地悪したり思いやったりしているのが心地よい。本物の犬と猫も出てきて、いい味を出している。

フィックス×ロングショット×長回しの映像が激しくわたし好みだが、登場人物の行動を少し離れたところから見つめることで、絶妙のおかしみを醸しだしている。たとえば冒頭、スズがアイスを買って帰ってきて、同じショットで今度はスーツケースをもってふたたびアパートから出てくるところや、スズとヨーコが同じように交差点で道に迷ったり、犬と格闘したりするところ。ちなみに、古田に「アイスはいらない」と答えたスズが、次のショットでアイスを買ってくるところは『丹下左膳餘話 百萬両の壺』[C1935-07]を連想させる。このシーンでアパートの前に焼き芋屋さんがいて人が群がっているのも、アイスとの対比でおもしろい。

ロケ地選びもすばらしく、映像のスタイルとうまく組み合わさって効果をあげている。ごくふつうの住宅街だけど、石段や坂道の使い方がすばらしい。練馬区ヤマザキYショップや江古田・栄町本通り商店街、杉並区立柿木図書館などが出てくるが、石段などのロケ地はどこだろう。描かれているのは秋から冬になるあたりの季節で、街のくすんだ色彩が、少しずつ厚着になっていく登場人物の服装とともに、この季節独特の空気感を醸しだしている。半分紅葉したような木々のさりげなさも、『東京公園』[C2011-03]のようなこれ見よがしにきれいな紅葉よりもソソられる。

主な舞台になる家がまたいい。築何十年かの、あまりパッとしない小さな平屋だけど、木の枠が白く塗られたガラス戸に濡れ縁、畳にちゃぶ台。ところどころかわいいものがあるけれど、いかにもおしゃれなインテリアではなく、ちょっと雑然とした感じが醸しだす生活のにおい。冬なのにやたらと窓を開けているところも昔の映画みたいでよかった。